針と文字盤 | 歯車の輪列 | 調速機と脱進機 | ゼンマイの動力 | リューズ操作
時計が正しく時間を刻む、つまり歯車が同じスピードで回転し続けるしくみを簡単に説明します。この役割を「調速機」と「脱進機」の2つの機構が担います。
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同じ重りとヒモの長さであれば、揺れ方の大小の関係なく、振り子が一往復する時間は同じです。これはガリレオが1581年に発見した「振り子の等時性」です。時計はこの等時性を利用して時間の進みを一定に保ちます。
「振り子の等時性」のイメージ ※厳密には、振れがある程度大きいと等時性は失われます |
「振り子の等時性」を利用して一定速度で歯車が回転するための仕組みが「脱進機」です。ゼンマイの動力で回転し続ようとするギザギザの歯車「ガンギ車」を、振り子と連動する2つの爪が受け止めたり外したりすることで、ガンギ車が一定速度で回転することになります。
「振り子」と「脱進機」のイメージ |
ガンギ車の軸のカナと時計の針を動かす歯車達を連動させることで、正しく時間を刻むようになるのです。
しかし、このままでは当然持ち運びはできません。
振り子の仕組みを小さく持ち運びができるようにしたものが「テンプ」です。 「ヒゲゼンマイ」という等時性のあるバネの伸縮によって、テンプが振り子と同じように一定周期で回転振動します。 振り子に比べ次の3つのメリットがありました。
「振り子」 | 「テンプ」と「ヒゲゼンマイ」 |
等時性を持つ「テンプ」と「脱進機」を組み合わせたのが、今の懐中時計や腕時計の心臓部分になっています。
この図の脱進機で、テンプと連動してガンギ車の歯を進める部品を、船の錨の形に似ていることから「アンクル」といいます。
機械式時計の「チチチ・・・」という音は、アンクルの爪でガンギ車の歯を受け止めたり外れたりするときの音です。
ところで、振り子もテンプもそのままにするとだんだん振動が弱くなっていきます。 このため、「脱進機」はテンプからスピードの制御を受ける一方で、逆にテンプが振動するための力をテンプの中心の振り石に対して少しずつ与え続けているのです。
前ページの歯車の例で、 分針の歯車「二番車」が1時間に1回転するために「ガンギ車」は1時間に600回転、ということは1秒間に1/6回転する必要があります。
ガンギ車の歯数は15枚なので1秒間に2.5歯分進めるためには、テンプは左右に計5回振れれば良いのです。
ここが時計の精度を左右する部分、まさに心臓部であり、極めて正確に1秒間に5回振れるように調整しなくてはいけないのです。
このテンプの振動数は、物理の世界では2.5振動(Hz)ですが、時計の世界では毎秒5振動、あるいは18,000bph(beat
per hour)と表します。今は6〜8振動のハイビートが一般的です。