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針付けの風景と完成写真 |
オメガの手巻き式のスピードマスターといえば、NASAのアポロ宇宙計画に公式採用された時計として非常に人気があります。
その当時の初期型ムーブメントが、レマニア社の傑作キャリバー321。メンテナンス性や精度の面で現行861系に劣るそうですが、ピラーホイールやブレゲひげ等の高級感や古典的な意匠に憧れます。今では、ブレゲやバシュロンなどの超高級ブランドでしか見ることのできない希少なキャリバーです。
ここでは、キャリバー321を搭載していた、いわゆるPre-moon オメガ・スピードマスターの自作に挑戦します。
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当サイト開設(2004年8月)よりも前から、オリジナルのNOSパーツを集めてきました。
純正文字盤(ダイヤル)
4thの特徴である長い蛍光インデックスとアップライトのオメガマーク。 |
各種ハンド
時針、分針。ハカマのサイズが異なる秒針、計測針。 |
オリジナルのクロノグラフ針
4thまで採用されていたオールドスタイル。 |
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純正ケース
cal.321搭載の4thのref.145012と同型ケース(ref.1450012)。 |
ブレスレットとエンドピース
標準ブレス(ref.1171-000)とケースに取り付けるための部品(ref.633)。 |
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1942年にアルバート・ピゲが開発したレマニア社のクロノグラフ。ブレゲ巻上げヒゲや、コラムホイールと採用する高級感ただようムーブメント。
直径27.3mmは実際驚くほど小さいです。
オメガ キャリバー321(Cal.27CHRO C12)
直径27.3mm、17石、18,000振動/時、手巻き。 |
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現在、キャリバー321のメンテナンス中です。破損しやすいパーツは交換用や予備として収集しました。
クロノグラフランナー
歯数が最も細かい歯車。レマニアのCH27 C12のNOS品。 |
ブレーキレバー
複雑な形状。バネ部分は細く折れやすい。レマニアCH27用。 |
リセットハンマー
プッシュボタンの力が直接がかかるため、疲労しやすい部品。レマニア製。 |
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四番車
表に秒針、裏にドライビングホイールが付くので、軸が細長く損傷しやすい。 |
ゼンマイ
切れたりへたっている場合には必要。オメガ純正。 |
巻き真
長めの新品。 |
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ジャガー・ルクルトはオーバーホールの時に必ずゼンマイを交換するらしいです。。。
傑作ムーブメントを眺められるようシースルーバックを入手しました。(もちろんオリジナルには存在しませんが)
通常の固定リング(下写真の左上のリング)だと中身の機械がガタついてしまうため、専用のムーブメントリングも必要です。
シースルーバック
ガラスの裏蓋と、厚みのある専用のムーブメントリング。 |
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せっかくなので、キャリバー321を分解して、クロノグラフの全パーツを観察してみます。
ムーブメントの解説書を参照しながら分解、組み立てを行います。
クロノグラフの解説書 | レマニア27CHRO C12の解説書 | ドライビングホイールのリムーバー |
クロノグラフは歯車は軸がとても細いので慎重に取り扱います。はめ殺しのドライビングホイールの取り外しはとても難しいです。プレートを傷つけないようにビニールを間に挟んでから、リムーバーで抜き取ります。クロノグラフをコントロールする複雑な形のコラムホイール(ピラー)は、直径わずか4mm。
クロノの歯車 | 状態の悪いクロノグラフランナー | 8本柱のコラムホイール |
特徴的なレマニアの"U"字型のブリッジとイカのような形のリセットハンマー。小さいスプリングバネやネジは飛びやすいので要注意です。時間積算のレバーを固定するネジは逆回し。
ブリッジ、カップリングクラッチ | リセットハンマー、ブレーキレバー | オペレーティングレバーなど |
裏面、文字盤側にあるのは、12時間積算計の歯車やレバー、ハンマー等です。
時間積算用パーツ | 文字板側のブリッジ | 素のムーブメント |
ベースムーブメントのオーバーホールは省略します。日差30秒、ビートエラー0.9msとなかなか良い精度です。
パーツはベンジンと刷毛でキレイにします。ネジは一つとして同じものがないので、元のようにきちんと分類しておきます。
ベンジンと洗い刷毛 | 洗浄したパーツ | ヨウジの先端より小さいネジ |
以下の順番に注油しながら組み立てていきます。主にグリース(MOEBIUS D-5)、時には9020を適当に。
機械台 | コラム(ピラー)ホイール | リセットハンマーをロックするピン |
クロノグラフランナーは歯が欠けていたので交換します。昔の未使用品ですが、経年の汚れを落とし、裏側もしっかりポリッシュします。
交換用のクロノグラフ車のバリ取り | ブリッジ、積算計 | オペレーティングレバー、ブレーキ |
一番取り付けが難しいのがリセットハンマーです。パーツどうしが接触するポリッシュ面を傷つけないように慎重に取り扱います。
リセットハンマー裏面と注油箇所 | ハンマーの下に覗くスプリングバネ | カップリングクラッチ |
はめ殺しのドライビングホイールはブリッジと平行に、適切な高さに正確に取り付けます。
時積算用ブレーキのレバー | ハンドプレスが便利 | ドライビングホイール |
続いて、文字盤側の時積算計の組み立てに移ります。裏返してムーブメントホルダーに固定します。
861用ムーブメントホルダー | 時積算用の歯車 | ゼロリセット用レバー |
時積算計が勝手に動き出さないように、香箱の上の歯車と2方向から押さえているスプリングは重要な調整部分です。また、時積算車をロックするブレーキレバーと接触する偏心ネジも調整する必要があります。
香箱の上の積算計との連動部 | 積算車とリセットハンマー | ブレーキレバー |
こちら側もカナやパーツどおしの接触部に注油しながら、組み立てていきます。
クロノグラフ機構の調整を行います。
時積算計は、香箱の上で常に噛み合っているので、ブレーキをかけて止めています。そこで、香箱とのスリップの具合と、ブレーキのスプリングバネのテンション(張り)や深さを微妙に調整する必要があります。
時積算のスリップの調整 | 時積算のブレーキの調整 |
うまく調整できていないとスタートしていないのに勝手に積算計が動き出してしまいます。クロノグラフではありがちなトラブルです。
以下は、秒と分の計測の調整です。最終的には、針をつけてから調整します。
噛み合わせの調整 | ここは針付け後 |
文字盤の足を、2箇所にはめ込み、裏側からネジで固定します。
文字板の足の穴 | 文字板を固定 |
針は計測針から先に付けます。クロノグラフの計測針はリセット時に瞬間的に回転するので、とてもきつく固定されるようにできています。ハンドプレスで押し込むのは難しいので、12時間積算計針を固定した後に、上からハンマーで叩いて一発固定します。
正確なリセット位置に固定されなかった場合は、リムーバーで引き抜いてやり直しです。
秒針(左)、分積算(右)、時積算(下) | HOROTECのハンドプレス | 12時間積算計 |
積算針が固定できたら、12時位置に揃えて時針と分針を固定します。
時積算、分積算を固定 | 時針、分針を固定 |
クロノグラフ針もとてもきついので、ハンマーで叩いて固定します。
クロノグラフ針(秒計測針) | クロノグラフ針の固定 | すべての針を固定 |
まっすぐに針をそろえるのはとても難しいです。
完成したスピードマスターの精悍な顔 |
まず、ケースをキレイに掃除します。見えにくい油や、極小のチリも見逃してはいけません。
ムーブメントリングは、シースルーバックで固定できるよう、厚みがあります。
ベンジン、ブロア等 | ムーブメント固定リング | ケースに収納 |
ムーブメントは2箇所のネジでリングに固定します。
巻き芯の長さを調整します。短くカットしすぎないように何度も調整しながら長さを合わせます。四つ割りで巻き芯を掴んで、リューズをねじ込んで固定します。
巻き芯はオペレーティングレバー根元付近の小さいネジをゆるめて抜き差しします。ゆるめすぎると文字盤側の巻上げ機構が外れて組みなおしになるので注意が必要です。
長さが決まったら、巻き芯にグリス、MOEBIUS D-5を注して、取り付けます。
巻き芯とリューズ | 四つ割り | リューズの完成 |
続いてシースルーバックを取り付けます。
防水用のガスケット(Oリング)をシリコン塗布器に挟み込んでシリコンを塗り、ケースに付けます。ゴム製のガスケットは傷つきやすいので柔らかいヨウジで隙間に埋め込んでいきます。
シースルーバックとガスケット(Oリング) | シリコン塗布 | ガスケットの取り付け |
最後に裏蓋を被せて、傷つけないようにビニールの上からケースオープナーでねじ込みます。
ケースオープナー |
以上で、本体が完成です。
ケーシング完了 |
最後にステンレスブレスレットを付ければ完成です。
ラグの幅は20mmですが、エンドピースは0.1mm程度大きめなので、取り付け時に形状がゆがんだり、ラグ部分が傷ついたりする可能性があります。少しだけヤスリがけを行いました。
ステンレスブレスとエンドピース | ブレスが装着されるラグ部分 | ブレスの取り付け |
クロノグラフ機構の調整を行います。
スタートのタイミング、分積算のタイミングを調整します。
噛み合わせの調整 |
出来上がりました。
完成したスピードマスター全体像 |
シースルーバックとステンレスブレス |
オリジナルのクロノグラフハンド、アップライトのオメガマーク、プロフェッショナルの文字盤 |
シースルーバックから手巻き式キャリバー321 |