2014-07-09
機械式時計のルーツはイギリスにあり。大航海時代の17世紀、トーマス・トンピオン、ジョージ・グラハムといった優れた時計師を輩出し、イギリスは世界の時計産業の中心だったのです。古い町並みでは今も中世の時計塔が時を刻んでいます。
ヒースロー空港でレンタカーを借りて、まず向かったのは今回の旅の起点、オックスフォード。
大学の町だけあって、町中には学生らしき若者であふれています。町の中心には、カーファックスタワーと呼ばれる古めかしい塔が建っています。もともとは14世紀の教会に付属の時計塔でした。素朴なカラクリ時計が設置されていて、古代ローマ風の人形が15分おきに鐘を鳴らします。柔らかい鐘の音を聞くと、ヨーロッパに来た実感がわいてきます。
カーファックス・タワー | トム・タワー |
少し南に歩くと目を引くのが、クライストチャーチ校の表門、トム・タワーです。重さ6トンもの巨大な鐘、その名もグレート・トムを収容しています。 かつての門限であった午後9時5分になると、今でも毎日鐘が鳴るそうです。
こうした鐘の音は、昔の人々が時間を知る術でした。このことから、英語の「clock(クロック)」はラテン語の「clocca(鐘)」に由来しているのです。
オックスフォードの西に広がるコッツウォルズ丘陵には、中世に羊毛の産地として栄えた村々が当時のままの姿で残されています。マナーハウスと呼ばれる地方領主の館も点在していて、古き良き英国の上品な田園風景が楽しめます。
チッピングカムデンやボートンオンザウォーター等をドライブした後、バイブリーのマナーハウス、バイブリーコートに泊まることにしました。車で敷地に乗り入れると、長い路が奥まで続き、17世紀の重厚な邸宅が現れます。建物に入ると、古いロングケース・クロックが迎えてくれました。
すぐ裏手には小さな教会があって、1時間おきに澄んだ鐘の音で時刻を教えてくれます。ヨーロッパを旅行しても、以外と鐘の音を気に止めない方が多いようですが、それだけ鐘の音がその町の雰囲気に溶け込んでいることなのでしょう。
ソールズベリーには、イギリスで最も高い尖塔を持つソールズベリ大聖堂があります。
1386年、ここに設置された塔時計は今でも現役で、世界最古の時計といわれています。文字盤はなく鐘の音で時を知らせる原始的な機械式時計です。15分おきにウエストミンスターチャイムを聞くことができます。
機械はとても巨大で人の背丈ほどあります。調速は、振り子ではなく、フォリオ(棒テンプ)とバージ(脱進用の軸)で行います。滑車で吊るされた錘が下がる力を動力としています。腕時計との違いは以下のとおりです。
腕時計 懐中時計 |
掛時計 置時計 |
時計塔 | |
動力 | ゼンマイ | ゼンマイ、錘 | 錘 |
調速 | テンプ | 振り子 | 振り子、フォリオ |
振動数 | 2.5〜5Hz | 0.5〜1Hz | 〜0.5Hz |
サイズ | 20mm〜40mm | 5cm〜20cm | 1m〜3m |
聖堂のゴシック様式の荘厳さと内部の彫刻の素晴らしさはもちろんなのですが、動いている塔時計の機械を間近で見ることができたのは、またとない貴重な体験でした。
イングランドの南東に位置する、カンタベリーはイギリス最大の巡礼地。イギリス国教会の総本山、カンタベリー大聖堂があることで有名です。残念ながら鐘楼内部が修復中で鐘の音を聞くことはできませんでしたが、近くの別の教会の鐘が、聞きなれたウエストミンスターではなく、セントミカエルと思しきリズムを奏でていたのが印象的でした。
城壁に囲まれた旧市街は、500年以上前の木骨造りの建物がレストランやホテル、カフェに使われています。天井の梁や狭い階段が歴史を感じさせる、こじんまりとしたホテルに泊まりましたが、巡礼と思われる年配女性の一人旅や少人数のグループが宿泊されていました。 町全体に敬虔な雰囲気が漂う実に魅力的な町です。
【宿泊先情報】
1)リントンロッジ・ホテル(Linton Lodge) - オックスフォード
19世紀の邸宅を改装したホテル。閑静な市街に立地。
2)バイブリー・コート(Bibury Court) - コッツウォルズ
1633年のサックビル家の屋敷がもとのマナーハウス。広い部屋と広大な庭園。
3)ローズ・アンド・クラウン(Legacy Rose & Crown) - ソールズベリ
エイボン川沿いに聖堂を望むホテル。13世紀の馬車用の宿泊施設。
4)ピルグリムズ・ホテル(Pilgrims Hotel) - カンタベリー
ストゥア川のそば、ハイストリートから一歩入った家族経営のホテル。
【ガイドブックに載っていないオススメグルメ】
1)イーグルアンドチャイルド(Eagle and Child) - オックスフォード 49 St Giles
かのトールキンやCSルイスがいきつけだったパブレストラン。
2)店名不明 - チッピングカムデン High Street
ツーリストインフォメーションの並びのティールーム。
3)ダイヤルハウスホテル(Dial House) - ボートンオンザウォーター High Street
レストラン利用も可。ローストビーフ等の英国料理を現代風にアレンジ。
4)モートティールーム(Moat Tea Rooms) - カンタベリー 67 Burgate
おばさんがきりもりする小さな店で2階が喫茶室。聖堂の門の通り沿い。
<<ページのトップに戻る↑ | 後編:グリニッジ、ロンドン>>