トレッキングには高度計搭載のスペシャルウォッチ

レビュートーメン・エアスピード・アルティメーター

物心ついた頃から北アルプスに連れて行かれていたこともあり、今でも時々山に向かいます。 学生時代のような重装備の山行からは縁遠くなりましたが、代わりにのんびりとした温泉付きの縦走や海外トレッキングを楽しんでいます。 その際の強力なパートナーが、このレビュー・トーメンの腕時計です。

腕時計と航空計器のノウハウを結集

最大の特徴はセンターのオレンジの針で、標高4500メートルまでをサポートする高度計です。 10年前とは思えないほど洗練されたデザインは機能美に溢れています。 直径40ミリの分厚い防水ケースは中の精密機械をしっかりと保護し、軽量なチタニウム製なのでフィールドでの行動を妨げることがありません。 唯一の難点であった金属ブレスは、着脱が容易なベルクロ式ストラップに付け替えました。

さて、山の朝はまずゼンマイを巻くことから始まります。30回ほど十分に巻き上げた後、高度計を補正します。

リューズを押し込むと時計の内部が外気圧で満たされ、オレンジの針が正確な気圧を指し示します。 針の先端が現在地の標高となるように、高度目盛りが刻まれた回転ベゼルを調節すれば完了です。

山の天候は変わりやすく気圧も刻々と変化していくため、行動中は数時間おきに標高がわかる場所や地形図をもとに高度補正をする必要があります。 わずらわしく思えるかもしれませんが、リューズを押してベゼルを少し回すだけという簡単操作が、この時計の素晴らしいところです。 また、一本の針で気圧も読み取れるので、慣れてくると天気が悪くなる徴候に気づくこともできるのです。

もちろん、腕時計としても視認性は抜群です。風雨の中でも岩稜の途中でも、袖口からチラッと覗いただけで一瞬で時間がわかります。針やアラビア数字のインデックスは、高い視認性が求められる航空時計デザインを踏襲しているからでしょう。

 

1853年創業のレビュー・トーメン社は腕時計はもとより、航空計器のトップブランドとしても有名です。 中でも高度計は、コンパクトな登山装備用のモデルも展開していて、世界中のアルピニストから絶大な信頼を得ています。 そんな登山繋がりもあって、90年代にはトレッキング用の腕時計を多数リリースしていたこともありました。 当時は、時計屋よりもむしろ登山用品店でよく見かけました。高度計の陳列棚の横に簡易方位計やコンパスを搭載した腕時計、ランドマーク・シリーズが並んでいたことを覚えています。 その後、ブランド戦略を転換しパイロットウォッチとドレスウォッチに注力するようになりましたが、このエアスピード・アルティメーターは、この転換期に開発された限定品です。

内部に目を向けてみると、ムーブメントは手巻き式のETA製キャリバー7001を搭載。 スポーツモデルながら今どき手巻き式というのも意見がわかれるところですが、高度計を組み込むスペース上の理由はさておき、シンプルな手巻き式は故障が少ないというメリットがあります。 ムーブメントの下に配置された高度計は、トーメン・ブランドで実績のあるアネロイド式です。 真空の小さいカプセルが外気圧の変化で伸縮する動きを歯車の回転運動に変換した機械式の高度計なのです。

最近のデジタルなフィールドウォッチは高機能で、高度や時間を記録する機能まで付いているものもあります。 そうしたハイテクツールに及びませんが、時刻と同じように、針の位置で標高を直感的に把握できるのはアナログ表示ならではです。 現在位置を知るという本来の目的には地形図とコンパスで事足りるのですが、実際にどれだけ高度を稼いだか実感できるのは素晴らしいことです。 さらに、毎朝必ずゼンマイを巻き、高度補正をするという面倒な習慣を山に持ち込むことが大変面白いと思います。またとない機械式装備の逸品です。