直径34mm/厚さ12mm/20micronGP |
シルバー文字盤 |
Cal.120/28.0mm/手巻き/17石/毎時18,000振動 |
世界で初めてのアラーム腕時計、バルカンのクリケットです。
コオロギが鳴き声と称されるアラームは、二重構造の裏蓋に共鳴して、そのサイズからは想像できないほどの大きな音を発します。1947年に発表されたクリケットは、太平洋戦争中のアメリカ大統領、トルーマンをはじめとして、歴代の合衆国大統領に愛用され続けた時計としても有名です。
シルバー文字盤にV字のロゴ、アップライトのインデックスなど、発表された当時のオリジナルのクリケットの姿そのままです。
この時計の魅力は数々の新機構が搭載されたムーブメントにあります。
アラーム用のハンマー |
巻上げ切り替えのメカニズム |
アラーム機構は、大きなハンマーが二重裏蓋の内側の突起を打ち、共鳴させます。時刻と独立したゼンマイで稼動するため、十分な駆動時間を得ることができます。
また、1つのリューズで時刻用、アラーム用の2つのゼンマイを巻き上げる画期的な機構を持ちます。普通の時計はリューズを手前に巻くと空回りしますが、この時計はアラーム用のゼンマイを巻き上げることができます。
そして、テンプの軸の天芯には独自の安定機構「エグザクトマチック」を搭載し、耐震装置「インカブロック」とともに時計としての精度、品質にも妥協がありません。
すべての部品を自社で製造することにこだわるマニュファクチュール、バルカンが5年の歳月をかけて開発した技術の結晶です。
ジャガー・ルクルトが1956年に発表したメモボックスは、クリケットと並ぶロングセラーの傑作です。エボーシュメーカー、ア・シールド社が1957年に開発したCAL.1475は改良を重ね多くの時計メーカーで採用され、CAL.1930はレビュー・トーメンのクリケットにも搭載されました。
国産でも、セイコーのベルマチック、シチズンのアラームなど発表されましたが、現在は製造されていません。
60年代のスイス時計業界では業績悪化により、グループ統合の波が押し寄せます。バルカンも1961年にMSRグループに参入し、86年以降クリケットは同グループのレビュートーメン・ブランドで発売されるようになります。その後もグループ再編は続き、マニュファクチュール「バルカン」はいつのまにか姿を消してしまいます。コストのかかるCAL.120も、エボーシュのア・シールド社のムーブメントに取って変わられました。
機械式時計の良さが見直されてきた2001年、スイス ル・ロックルのPMH社(Production & Making Horloger)がクリケットの商標権を取得し、Cal.120を継承したCal.V10を開発、2002年にバルカン・ブランドとしてクリケットが復活しました。