時計工房の実態

スイス時計業界を支える技術集団

次々と発表される超複雑時計(コンプリケーション)。独立時計師によって開発されたものと大手メゾンが発表するものがありますが、後者の開発には陰の時計工房の存在を抜きにしては語れません。

例えば、アーノルド&サンの「トゥールビヨン ミステリュー」は、クリストフ・クラーレ社製トゥールビヨン・エボーシュにラ・ジュウ・ペレ社製GMTモジュールを組み合わせた時計です。

ルノー・エ・パピ

複雑時計開発集団として有名なルノー・エ・パピ(APRP)。1986年、オーデマ・ピゲに在籍していたジウリオ・パピとドミニク・ルノーがル・ロックルに設立したムーブメント開発専門の特殊な会社です。1992年にAPの完全子会社となっています。

スイス伝統工芸を具現化する親会社のオーデマ・ピゲとは異なり、新しいテクノロジーや斬新なファンクションを次々に開発しています。中でも最先端の素材が使われたリシャール・ミルの機械は見るものを圧倒します。

最近では2005年にブライトリング初のトゥールビヨン「ベントレー・マリナー・トゥールビヨン」のムーブメントを開発しました。

VCVJ

ヴァシュロン・コンスタンタンのコンプリケーションの設計、開発を行う頭脳集団。ジュウ渓谷のル・サンティエにあります。1992年に設立されたHDG社(Haut de Gamme)が99年にヴァシュロン・コンスタンタン傘下に入り、ヴァシュロン・コンスタンタン・ヴァレード・ジュウ(Vacheron Constantin Vallee du Joux)と改名。

ヴォシェ・マニュファクチュール・フルリエ

パルミジャーニ・フルリエのムーブメント製造部門ボシェ社(Vaucher)。ムーブメントの開発、設計から、トゥールビヨンやミニッツリピーターなどの複雑時計の組み立ても担当します。

2000年、ヒゲゼンマイやガンギ車などの特殊部品を製造するアトカルパ社、工作機械メーカーのエルウィン社と統合し、パルミジャーニ・フルリエのマニュファクチュール化が実現しました。

ラ・ジュウ・ペレ

ジャケ・ドローやアーノルド&サン、グラハムといった高級ブランドに、独自の改造を施したムーブメントを提供する工房、ラ・ジュー・ペレ(La Joux-Perret)。ジャケ社という以前の社名の方が有名かもしれません。ラ・ショー・ド・フォン(La-Chaux-de-Fonds)にあります。

2005年、ETA社の汎用クロノグラフ・ムーブとして知られるキャリバー7750をコラム・ホイール方式に改良したムーブメントを開発。エベラールとシュワルツ・エチネンスに供給しています。

BNB

エンリマ・バルバシーニ、ミッシェル・ナヴァス、マティアス・ビュッテの3人によって2004年に設立された新進気鋭の工房。ガンギ車、アンクルからテンプにいたるまで製造することができる極めて高い技術力を有する工房。

設立からわずか10ヶ月という短期間で、ウブロのためのトゥールビヨンを開発したことは有名。現在、ウブロとド・ヴィットを中心にムーブメント開発を行っていますが、独立時計師やその他の大手ブランドとの連携も行っていくようです。凄腕時計師集団に成長したBNBは、スイス時計をますますおもしろくさせるはずです。

クリストフ・クラーレ

トゥールビヨンを得意とする独立時計師クリストフ・クラーレ(Christophe Claret)が開いた工房。アントワーヌ・プレジウンソやドゥ・ヴィット(DE WITT)などのハイエンドなブランドに、トゥールビヨンのエボーシュを提供しています。

ハリー・ウィンストンが毎年発表する究極のコンプリケーション「オーパス」の製作に2004年に起用され、ダブルフェイス・トゥールビヨンを製作しました。

STT(Swiss Time Technology SA)

プログレス・ウオッチという旧社名が有名。アメリカ資本のムーブメント製造メーカーとして1998年に創業。安価なトゥールビヨンを開発しクロノスイスやアラン・シルベスタインに提供されましたが、資金繰りが悪化し一時倒産。現在、STTとしてトゥールビヨンや自動巻きムーブメントを生産しています。

2006年7月、ボヴェに買収されました。ボヴェはスイス伝統の分業体制で、彫金や機械など一流の専門メーカーに依頼して工芸品のような高級時計を作るブランドとして有名ですが、2008年のマニュファクチュール化を目指しています。

グランジャン

デゥボア・デプラ

ジラール・ペルゴやブライトリングにクロノグラフ・モジュールを供給する専門メーカー。

ヌーベル・レマニア

古くからクロノグラフムーブメントを開発してきたエボーシュメーカー。一方で、ブレゲなどの高級ブランドの複雑時計にトゥールビヨンを供給しています。

フレデリック・ピゲ

旧ルイ・エリゼ・ピゲ。

ヴィクトラン・ピゲ