焼けた文字盤の2つ目のビンテージクロノグラフ |
ブリッジの形から初期型とわかる |
右のクロノグラフは、40年代から60年代にかけてブライトリングに採用された傑作ムーブメント、ヴィーナス社(Venus)のキャリバー175を搭載しています。
ここでは、現在でも非常に人気のあるこのオールド・ムーブメントを実際に分解して複雑なメカニズムを勉強してみましょう。
参考資料:まずはムーブメントを取り出します。文字盤や針などの繊細な部品を取り扱うので、この段階から既に気をつかいます。皮ベルトは最初に取るべきでした。
オペレーティングレバーに開いた小さい穴から、ドライバーを入れ、 |
風防ガラスとベゼルをはずす |
ムーブメントは、文字盤側から収められ、裏側から2個のネジ(赤字)で固定されています。時針と分針とクロノグラフ針は12時位置にそろえて、剣抜き器でまとめて抜きます。文字盤はネジ(青字)をゆるめると外れますが、時計の顔ですので歪めたり傷つけたりしないよう注意して扱います。
ムーブの固定ネジ(赤)と、文字盤の固定ネジ(青)を取る |
針をはずす。中央の針は3本まとめて抜く。 |
時針が付いていたツツ車とワッシャーは取り外します。ムーブメントを裏返して、機械台に固定します。
スイスのビーナス社の刻印 |
機械台に固定する |
分解を始める前に、図の4個のネジは、クロノグラフの動作を調節する重要なものなので、絶対に取り外してはいけません。
クロノグラフのアジャストスクリュー(調整ネジ) |
まずは、ドライビングホイールを取り外します。四番車(秒針)と同軸に固定されている歯車で、秒針と一緒に常に回転しています。剣抜き器に似た専用のリムーバーを使って外します。四番車の中心軸(下図)はとても細く長いので、折れたり曲がったりしやすいので慎重に行います。
四番車の軸からドライビングホイールを外したところ |
マッチ棒の先端と同じ大きさのドライビングホイール |
次にカップリングクラッチとトランスミッションホイールを外します。これらは、ボタン操作でドライビングホイールからの動力をクロノグラフ機構に連結する役割があります。ホイールの歯を傷つけないように注意します。
赤いネジはクロノの調整ネジなので絶対に外してはいけません。
カップリングクラッチとスプリングを取り外します。 |
ドライビングホイール、カップリングクラッチ、 |
スタートボタンの動作をピラーホイールに伝達するオペレーティングレバーとそのスプリングを取り外します。
クロノグラフ機構を囲む長いアームとスプリング |
取り外したオペレーティングレバー |
続いて、リセットボタンに連動するリセットレバー(フライバックレバー)とゼロリセット(帰零)するハンマーを外します。
リセットレバーのスプリングは飛びやすいので注意 |
リセットハンマー |
リセットハンマーとリセットレバー |
クロノグラフホイールを固定するためのブレーキレバー(ブロッキングレバー)と、リセットハンマーをロックするレバーを分解します。ここでも赤いネジはクロノの調整ネジなので絶対に外してはいけません。
リセットハンマーボルト(ロックレバー)とブレーキレーバー周辺 |
慎重にドライバーを入れていきます |
写真の2本足の繊細なパーツはブレーキレバーとスライディングギア両方のためのスプリングです。
ブレーキレーバー・スライディングギア・スプリング |
分解したリセットハンマーボルト(ロックレバー)とブレーキレバー |
クロノグラフの機構を制御するピラーホイール(コラムホイール)と、逆回転防止のジャンパーを取り外します。
ピラーホイールと逆回転止め |
ピラーホイールの特徴的な2階建て構造 |
ピラーホイールとジャンパー |
計測するクロノグラフランナー(クロノグラフホイール)とミニッツレコーディングホイールを固定しているブリッジとジャンパーを取り外します。
クロノグラフブリッジとミニッツレコーディングホイール・ジャンパー |
クロノグラフブリッジを取り外す |
クロノグラフランナーとミニッツレコーディングホイールの軸は非常に細く長いので、慎重に取り扱います。
ブリッジを外すとクロノグラフランナーはフリクションスプリングで浮き上がる |
ミニッツレコーディングホイール、クロノグラフランナー、 |
クロノグラフ・ブリッジ、ミニッツレコーディング・ジャンパー、 |
クロノグラフモジュールのプレートを取り外します。赤いネジはクロノ調整ネジと、巻き真のロック用ネジなので、ここでは外さない。
時計本体の上に取り付けられているクロノグラフ用のプレート |
クロノグラフプレート |
クロノグラフ機構をすべて取り外すと、通常の3針時計のムーブメントと同じ状態になります。
クロノグラフ機構をすべて取り外した状態 |
クロノグラフは、常に動きっぱなしの時計から、動力をもらって計測するメカニズムになっているのがわかります。
以上でクロノグラフの分解が完了しました。最後までお付き合い頂きありがとうございました。
次の機会には、組み立てと調整を行います。