アンティーク時計は繊細なので、ぶつけたりすると針が取れることがあります。ところが専門店に修理を相談すると分解清掃(オーバーホール)込みでないと受け付けてくれない場合があります。そこで、コンディションを確認した上で針を修理してみました。会社の先輩からの預かり物です。
【注意事項】
あくまで趣味として公開しており、決して専門的な技術レベルではございません。日常的な使用範囲を超えた行為ですので、お使いの腕時計の修理、調整は専門の時計修理業者にご依頼ください。万一ご自身で行う場合は自己責任でお願いします。
SEIKO CHAMPION (日本製)/GFケース/手巻き/Cal 851/17石/18,000振動/耐震装置(Diashock)
針が取れるほどの衝撃を受けたので、まずは中のムーブメントをチェックします。
秒針が出車方式の場合、表から針をプレスするとパーツが歪む可能性があるので、構造も確認。
11型のムーブメント |
動作もリューズ操作もまったく問題ないようなので、裏蓋を閉めます。
ベルジョンのオープナーでベゼルをプラ風防ごと取り外し、時針を12時位置にします。
文字盤側 |
ホロテック(Horotec)のハンドプレスで針を取り付けます。
分針の取り付け | 微調整 |
アプライドのバーインデックスや針同士が接触しないよう微妙な調整が必要です。
ラウンドした文字盤、先端を曲げた秒針がレトロな雰囲気。
時刻合わせをして12時位置で正しく時針と分針が重なること、分針を回転させても時針と秒針に触れないこと、ゼンマイを巻いて秒針がスムーズに回転することを確認します。
ブロア(チリ吹き)で、入念に風防内と文字盤の見えないゴミを飛ばし、ベゼルを被せたら完成です。
秒針がプラ風防に当たっていると、時計全体が止まってしまうので、そうなった場合は秒針の微調整が必要です。
ピタッとした極薄なシルエットが清楚で上品な腕時計です。
万が一、故障していないとも限らないので、マイクロセット・ウォッチ・タイマー(MicroSet Watch Timer)で精度を検査します。
計測した結果は以下のとおりです。24時間後もほぼ同様でした。
姿勢 | フル巻上げ状態 | 24時間後 | ||
歩度 | 片振り | 歩度 | 片振り | |
平置き(文字盤上) | +42.4秒 | 10.2ms | +44.0秒 | 10.7ms |
12時下(縦位置) | +31.5秒 | 10.8ms | -44.5秒 | 15.2ms |
3時下(リューズ下) | +19.8秒 | 10.8ms | +22.2秒 | 10.9ms |
プラス気味に調整されていて、24時間後も高い精度を維持していることがわかります。