職場の後輩が離任する際、贈った腕時計。
若者向きではない、あえてクラシカルなスタイルに仕上げました。
ベースは「自作の基礎:パーツの収集〜組み立て」とほぼ同じで、秘蔵のフォルツハイム産のケースを採用。ねじ込み式のリューズとケースバック、トランスパレント(裏側がシースルー)のハイクオリティな代物。
ショパールも工房を構えるドイツ・フォルツハイムは、高品質な金属加工製品が有名で、その起源は18世紀にまで遡ります。
ムーブメントはスイスETA社の2824-2です。高品質な25石の自動巻き。ゼンマイのトルクも高く精度を出しやすい機械です。
自動巻きローター(回転する重り)は真ん中のネジで取り外し、ゼンマイを開放します。片手でリューズをつまみながら、もう一方の手でコハゼのロックを外し、リューズをゆっくり逆回転させます。
ETA 2824-2 | コハゼのロック | 機械台に固定 |
裏返して機械台のムーブメントを固定し、針を取り付ける前に、まず日付が変わりはじめるところまで、リューズをまわします。
短針と長針は、12時の位置で重なるようにプレスします。
文字板の固定 | 長針、短針の取り付け |
長針、短針、秒針。まるであつらえたような絶妙な長さ。
針付け完了 |
ケースに収納し、ムーブメントリングで固定します。
ステンレス製のケース | 収納されたムーブメント |
巻き芯の長さを調整して、リューズを取り付ければほぼ組み立ては完了です。
マイクロセットのウォッチタイマーで、精度を計測しながら、調整していきます。(詳しい精度調整の方法)
マイクロセット ウォッチタイマー(タイムグラファー) | プロット画面 |
画面に斜めの平行線がプロットされます。この「傾き」が進みや遅れ(秒/日)で、「平行線の間隔」がビートエラー(ミリ秒)です。文字盤を上にした平置き、リューズ(3時)を下にした姿勢、縦置き(12時下)の3姿勢の精度を測ります。
姿勢 | 日差 | 片振り(ビートエラー) |
平置き | 7.2sec/day | 3.3ms |
3時下 | 8.8sec/day | 4.1ms |
12時下 | 10.3sec/day | 3.5ms |
やや進み気味に調整。
黒のレザーストラップを付ければ完成です。