2つ目クロノのクラシカルなデザイン |
スイス製と見分けがつかないほどの出来 |
手巻き式のクロノグラフムーブメント |
この時計は、スイス三大時計ブランドのメーカーのレプリカです。
現在、中国本土や香港ではとても精巧なレプリカが作られ、日本の市場がターゲットとなっています。よくよく見れば高級ブランドとは比べるべくもないのですが、本物と見分けがつかない方、偽者を掴まされた方の一助になればと思い、過去に入手したこの時計をサンプルとして取り上げてみます。
シルバー文字盤にローマ数字のインデックス、スモールセコンドと30分積算計の2つ目クロノ、大きめのラグにネジ留めされた皮ベルト。古の伝統的なスイス時計のスタイルを再現しています。
ケース、文字盤に刻まれた文字はもちろんすべて事実ではありません。ケース裏には18Kの刻印がありますが、決してホワイトゴールドではなく、当然ステンレススチールです。
搭載するムーブメントは本格的です。
スイス時計全盛期、50年代のクロノグラフの王道ともいえるピラーホイール、キャリングアーム、スライディングギアといったメカニズムを搭載。今では一部のマニュファクチュールでしか製造されていないこの構造は、ビーナス175/150系に酷似しています。
7枚ピラーのホイール |
クロノハンマーに重なるスライディングギア、ブレーキレバーなど |
ネジにはすべてブルースチールが使われ、ブリッジはコート・ド・ジュネーブ(波形模様)っぽく装飾され、スイスの伝統スタイルを模倣しています。
パーツは面取りされていないのでペラペラ感がありますが、すべてキレイに磨き上げられているのには驚かされます。
このムーブメントは60年代のロシアのストレラーやセコンダといった手巻きクロノグラフにも見ることができます。現在のロシアではオールドバルジュー(cal.7730系)と同じ設計の手巻きムーブを製造しています(経緯は「時計猿の小部屋」をご参照)。
プッシュボタンは驚くほど軽快で、エクセルシオパーク搭載のギャレット並です。カップリングクラッチもきちんと調整されているので、針飛びもなくスムーズにクロノグラフがスタートします。リセットの速さも爽快です。
ゼニスのエルプリメロも機能性、耐久性、精度的には世界最高かもしれませんが、操作感はこの中国クロノに及ばないでしょう。
中国でロシアの製造ラインを買収あるいは復活させたのか、ストックパーツを大量入手したのかは不明ですが、このムーブメントを搭載したオリジナルブランドの中国製クロノグラフが登場するのは時間の問題だと思います。
その時は、クォーツ時計の価格でこだわりの機械式クロノグラフが入手できることでしょう。