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機械式クロノグラフ作動のメカニズムを図解

クロノグラフの仕組み(2)

上のボタンでストップウォッチのスタート、ストップ、下のボタンで針をリセットします。電気やモーターを使わずに、どのようにストップウォッチの機能を実現しているのでしょうか。ここでは代表的なオールドムーブメントでもあるバルジュー23をもとにゆっくりと説明していきます。

【スタート】 【計測中】 【ストップ】 【リセット(帰零)】

各部の説明は、「クロノグラフとは?」で詳しく図解してます。

スタート

スタートボタンを押す前の状態です。
ドライビングホイールから動力は伝わっていません。クロノグラフホイールにもブレーキがかかっています。

プッシュボタンを押すと、ピラーホイール(コラムホイール)が一歯回転します。
ピラーの山にブレーキレバーが乗り上げ、ブレーキが外れます。
ピラーの谷にカップリングクラッチの先端が入り込み、トランスミッションホイールが噛み合い動力が伝わります。


※このようにクラッチをスライドさせてトランスミッションホイールで動力を接続、切断する方式を「キャリングアーム方式」といいます。




計測中

クロノグラフホイール(秒積算)、ミニッツレコーディングホイール(分積算)に動力が伝わり、ストップウォッチの計測が始まります。

計測中はリセットハンマー(上の絵の左の爪)が、ピラーの谷に入り込めません。つまりリセットボタンを押せず、リセットできない状態です。




ストップ

ストップウォッチで計測中の状態です。

プッシュボタンを押すと、スタートの時と同じように、ピラーホイールが一歯回転します。
ピラーの谷に入り込んでいたカップリングクラッチの先端が、今度はピラーの山に乗り上げ、動力を伝えていたトランスミッションホイールが外れます。
ピラーの谷にブレーキレバーが落ち、クロノグラフホイールにブレーキがかかります。

ストップウォッチの計測が停止します。
この状態から再びプッシュボタンを押すと計測がスタートします。
リセットボタンを押すと針がリセットされます。




リセット

ストップウォッチが停止中の状態です。
リセットの時は下のリセットボタンを使います。

リセットボタンを押すと、リセットハンマーが動きます。
ハンマーの動きは一瞬ですが、まずリセットハンマーのアームで、スライディングギアをスライドさせインターミディエイトホイール(中間車)を外し、クロノグラフホイール(秒)とミニッツレコーディングホイール(分)を切り離します。
同時に、スライディングギアはクロノグラフホイールを止めているブレーキレバーを外します。

リセットハンマーの動き

最後に、リセットハンマーはハートカムを叩き、クロノグラフホイールとミニッツレコーディングホイールを元の位置に一瞬で戻します。
文字盤側のクロノ針と分積算計の針はゼロにリセットされます。

クロノグラフは元の状態に戻りました。

各部の説明は、「クロノグラフとは?」で詳しく図解してます。

参考:Esemble-O-Graf Vol.7 Valjoux 23, c.1951, Western Pennsylvania Horological Institute, PA